— 教科書のない現場で —
この世界で長く仕事をしていると、
ふと気になることがある。
技術的に難しいことが分からなくても
舞台スタッフとして働くことはできる。
ただ、
一つでも技術的なことを知っているだけで
立っている場所が少し変わり
現場の空気が少し変わる。
そんな場面を何度か見てきた。
それは、
個人の強みになることもあれば
結果的に、
会社の強みになっていることもある。
ここで言う「技術」は、
一つの操作や
一つの知識の話ではない。
普段あまり意識せずにやっていること。
電球のワット数(W)とアンペア(A)の話だったり
30Aで何台いけるか?だったり
色を考える時のフィルターの選び方だったり。
そういうことも、
人によっては、ちゃんとした技術です。
■ 学ぶことと、真似ること
教科書がない分
技術は、
教わるというより
現場の中で拾っていくものになっていた。
先輩に、こう教わったことがある。
我々の世界は、学ぶのではなく
先輩たちの行動を見て「真似ぶ」ものだ、と。
確かに最初はそれで十分だった。
隣や後ろから見て、
同じように手を動かして現場を覚えていく。
そうやって、多くのことが引き継がれてきた。
我々舞台人が使ってきた道具は、
もともと
「こんなのがあると面白い」
「これがあったら楽になる」
という、先達たちの実感から形に
なってきたものだった。
だから、
仕組みとしても、使い方としても
現場の手が届く範囲に
収まっていたのだと思う。
それが、
昭和の終わりから平成の初めに
コンピュータ卓が登場した頃から、
少しずつ様子が変わってきた。
使える。
けれど「どうなっているのかは分からない」
という感覚を持つ場面が増えてきた。
そうなると、
先輩がやっていることを
そのまま真似るだけでは、
伝わらない・掴めない部分も出てくる。
技術の継承が、
以前と同じ形では
成り立たなくなってきた。
では、
こうした状況の中で
現場の技術は
どこで拾われていくのだろう。
見て真似るだけでは足りない場面で
何を手がかりにすればいいのか。
その答えは一つではないが、
考え始める場所として
このサイトが使われればと思っている。
