拾ってきた技術の話

close up of heater

ー 便利なはずの道具が、使われない ー

舞台照明の道具は、
便利になった分だけ、複雑な道具も増えてきた。

一昔前から考えれば、DMXもそうだし
コンピュータ卓であるノンフェーダー卓や Moving 卓
Moving 自体や LED などのデバイスもそうだ。

現場的に時間が無いから、
最低限どうすれば使えるかは覚えても
システム的に
「なぜそんなことが出来るのか」
という中身まで理解することは、
なかなか難しくなってきた。

■ 少し具体的な話

前職の劇場では、2005年から Ethernet を導入して使っていた。
各Susバトンや舞台袖には Node が設置され、
そこから状況に応じて DMX を配信できるシステムだ。

仕込みをする側からすると
かなり自由度の高い、便利な道具で
LAN ケーブル一本あれば、
DMX ケーブル何千本分もの信号をやり取りできる。

ただ最近、
劇場にいらした照明さん達から
少し気になる話をよく聞くようになった。

地方の劇場で、
私の職場と同じ Ethernet システムが
施工されている所があったそうだ。

その劇場で仕込みの都合上
Node の DMX パッチ変更をお願いしたところ
「断られた」というのだ。

「何故?」ですよね。

各Susバトンや舞台袖に設置された Node から
配信される DMX を自由に変更できるからこそ、
仕込みが楽になる道具なのに。

理由を聞くと、
「うちの劇場では出来ません」
だったそうだ。

話してくれた照明さんは、
Ethernet システムの使い方を学んでいる方だったので
自分が責任を持って扱うこと
公演終了時には
元の状態にきちんと戻すことも提案した。

それでも、
変更は認められなかったという。

■ 視点を変えてみると

この Ethernet システムは、
海外では 2000 年代に登場し始め、2010 年頃までには
都内の有名ないくつかの劇場で
設置されて使われ始めた。

だからこそ、
「同じものを地方の劇場にも入れよう」
という流れ自体は
照明の世界としても自然だったと思う。

ただ、
その道具が現場でどう使われているのか。
その「使われ方」までが
どこまで共有されていたのかは、
少し分からない。

実際、
調光卓についての話ではあるが、
メーカーの方が劇場に来て
現場での実際の運用を見て

「こんな使い方をしているんですか?」

と、驚いていたこともあった。

では、この道具は
どんな使われ方を想定して作られたのだろう。

その現場の使い方が想定外だったのか?
それとも、想定はしていたけれど、
そこまで踏み込まれるとは思っていなかったのか?

新しいシステムや道具が入って来て
「便利になるはずの道具」が
うまく使われない現場も確かに存在する。

同じ道具を前にして
• 「分からないモノ」と、そこで勉強を終えてしまう人もいれば
• 「これ、どうすればもっと便利に使える」と、考える人もいる

■ 道具との距離感

身近にある道具を少しだけ気にしてみる

これ、どう使うんだろう?
どう使えば、もう少し楽できるんだろう?
こんなこと、できないのかな?

そんな感覚を
いつもどこかに持っているスタッフは
やっぱり強い。

現場で頼りにされるのは
だいたいこの考え方ができる人だったりする。

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