舞台照明を支える二つの柱:公演を彩る光と劇場を支える力

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前回は、舞台の世界への「パスポート」として、学校という選択肢をご紹介しました。

ただし、これはあくまで「現場」に限った話です。同じ「舞台照明家」という肩書きを持っていても、実際に公演を担当する照明家と、劇場に所属し照明設備を管理する照明家とでは、求められる知識や役割に大きな違いがあるんです。

公演を担当する照明家

こちらは照明デザイナー(プランナー)が描いた「あかり」のイメージを具現化することが最大の使命です。そのため、照明機材に関する深い知識はもちろんのこと、色彩感覚や芸術的なセンスも求められます。さらに、限られた予算(人件費・機材費)とスケジュールの中で、最高のパフォーマンスを実現するために、関係各所との調整や交渉、現場の管理能力も必要不可欠です。公演初日を無事に迎えるためには、文字通り奔走することになります。

劇場付きの照明家

もう一方は、劇場という「場」を守り、照明設備を安全に、そして劇場が永く使えるように維持管理することが主な役割です。そのため、電気工事に関する知識や法規、安全基準に精通している必要があります。また、劇場設備の保守点検や修理、更新計画の立案なども重要な業務となります。
劇場での公演期間中は、公演担当の照明家が安全かつ円滑に作業を進められるようにサポートし、時間内に作業が完了するように見守る役割も担います。つまり、劇場付きの照明家は、技術的な知識と安全管理能力に加えて、劇場という公共空間を管理する責任感も求められるのです。

このように、「公演担当」と「劇場付き」は同じ「照明家」ながらも、異なる専門知識と役割を担っています。
しかし、ここで重要なのは、両者の知識や経験は決して独立したものではなく、互いに補完し合う関係にあるということです。

例えば

最新の照明機材に関する知識は、公演担当の照明家だけでなく、劇場設備の更新計画を立てる劇場付きの照明家にとっても有益です。
また、劇場設備の運用や保守に関するノウハウは、劇場付きの照明家だけでなく、公演期間中に安全かつ効率的に作業を進めるために、公演担当の照明家にとっても重要な情報となります。

ここで悩ましいのは、これらの情報や知識は、必ずしも学校教育中に学びきれないと言う事です。
現場で長年培ってきた経験や、各劇場特有のノウハウは教科書には載っていない貴重な財産なのですが、それぞれの劇場設備の運用方法に特化した知識のために、各学校で講師を担当している照明家も知り得ない情報が多いので授業として指導しきれないのが現状です。
また、法規や安全基準は常に更新されており、最新の情報を共有し解釈を深めることは、安全な劇場運営に不可欠です。これは、JATTEDや各省庁で入手できますが、常に最新情報を入手しに行かなければならず、これも授業に使用しきれない要員になります。

そして、一番大きな要員として、大学も専門学校も限られた時間の中で「照明家」を育てるために、主に「公演担当」をメインに育成しており、「劇場付き」を育成する教育機関は存在しないと言っても良いかと思います。
(少なくとも私は聞いたことがありません)

劇場付き同士で日頃培ってきた知識や経験、法規や安全基準に関する最新の情報共有はもちろんのこと、各劇場が抱える課題やその解決策などを共有する場があれば、一部に言われている劇場のレベルの差を改善でき、劇場全体の照明技術の向上に繋がるはずです。そんな場があれば学生も参加することで「劇場付き」への知識を得られる場になると思います。

皆様はどのようにお考えでしょうか。

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