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劇場の改修と建て替え、そして機材更新について
皆さんは、普段劇場に足を運ぶことはありますか?舞台の上演やコンサートなど、様々なイベントが開催される劇場ですが、実は、これらの建物は定期的に改修や建て替えが行われていることをご存知でしょうか。
劇場の改修と建て替えって、どう違う?
改修 とは
すでに建っている建物を部分的に修理したり、新しいものに交換したりすることです。例えば、壁を塗り替えたり、照明器具をLEDに変えたり、座席を新しくしたりといったことが挙げられます。
建て替え とは
古い建物を壊して、まったく新しい建物を建てることです。改修よりも大規模な工事で、劇場全体の機能を一新することができます
国立劇場や中野サンプラザ、帝国劇場では、建替えなどの話しが上がっています、一方で世田谷パブリックシアターなどでは改修工事の話題上がっています。このように劇場やホールでは、定期的に改修をしたり建て替えの話が出てきます。
もう少し詳しく、劇場の「改修」と「建て替え」について違いを比べてみてみましょう。
既存の建物を部分的に修繕、更新すること
規模:小規模から大規模まで(卓などの入替レベルから配管設備や一部躯体の変更までさまざま)
費用:建て替えに比べて比較的安価
期間:短期間で完了できることが多い(2ヶ月~1年程度)
メリット:運営を中断する期間が短く、費用を抑えられる。
デメリット:建築の躯体に影響するような全面的な機能向上は難しい。
また、更なる老朽化が進むと再度改修が必要の場合も(後述)
規模:大規模
費用:高額
期間:長期間
メリット:全面的な機能向上、最新の設備導入が可能、耐震性・防災性の向上
デメリット:運営を長期に中断、周辺への影響、費用が大きい
最新の設備、機材を導入しても、後述の耐用年数で改修は必要
◆ 劇場機材更新の必要性と耐用年数はどんな感じか?
更新の必要性としては、大きく以下のような点があります。
- 老朽化:機材の経年劣化で故障頻度の増加、性能低下がみられます。照明の電球程度であれば、すぐに交換可能ですが、調光卓や音響調整卓内部の基板や各種フェーダーなどの可動部分の摩耗、内部に侵入したホコリ、油分、湿気など、通常の清掃だけでは清掃しきれないなど不可抗力による不具合。
- 技術革新:新しい技術の発展よる効率化への対応。近年の例で言えば、白熱電球からLEDへの省エネ化。アナログ制御からデジタル制御への対応など。
- 省力化:人力から電動化する事による、マンパワーの削減。アナログ卓では人の手を使ってシーンを事前に作って再生しますが、デジタル卓(コンピュータ卓)では事前に記憶させる事で人の手数が減らせます。
- 法規制への対応:安全基準や法規はソフト(作品、プロダクト)ハード(建築)ともに影響があります。特に劇場と密接に関係があるものとしては「消防法」や「建築法」や「興業場法」などがあります。また、演劇関係団体による指針などが影響することもあります。
技術革新や省力化などの機能性向上として、操作性、通信(信号、ネットワーク)、処理速度、小型化、パワーアップ、持続性なども考えられます。
近年のミュージカルやコンサートでは、多数の映像や音響、照明をそれぞれ処理したり、電動機構による舞台装置も増えてきました。
これらの劇場に持ち込まれる最新機器に対応するには、劇場の設備として何も置かないか*1。対応できる最新の状態にしておく、どちらかを選択する必要が出てきます。
(*1 劇場に必要となるもの全てを持ち込み対応する。仕込み調整にお金と時間がかかるが、ブロードウェイなどはこの方式)
◆ 改修が必要な耐用年数などはどのようになっているでしょうか?
機材の種類、使用頻度、メンテナンス状況によって大きく異なりますが、これまで「業務用」という器具では
●照明器具 7年〜10年
●音響機器 7年〜15年
●舞台機構 20年程度
●電力配線 10年〜30年程度
と言われており、耐用年数を過ぎると、故障リスクが高まり、保守費用も増加します。
ただ、近年の電子機器の増加や充電対応の器具などで、先の耐用年数より2〜3年早く劣化の影響が出始めることが増えているようです。
まとめ
ここまで建て替えと改修による更新双方のメリットデメリットを見てきましたが、それに加えて、ホテルやら商業施設の増設などによる収入源の観点から「建て替え」を選択する劇場が、冒頭に挙げた劇場です。
ただ、円安や資材機材の価格高騰の影響によって先行きが見えづらくなっています。
(機材の入れ替えについても特に海外製品の影響がないわけではありませんが…)
後編に続く