舞台スタッフとして就職する?

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「照明さんになろう-学校編・会社編₋」発表後に、他のセクションについてお問い合わせをいただいたので、過去に「しばいのまち」で発表した記事を掲載します。

舞台の裏方の仕事に関しては「役者になりたくて裏方をしてるんでしょ?」って認識の方も、まだまだ多くいらっしゃいます…
ですが舞台スタッフの仕事に就きたい人は、割と多いと思いますし、私の所にも質問や相談を受けることもよくあります。

高校生・大学生くらいだと、未来の仕事場として意識する人もかなりいる
のではないでしょうか?

でも、専門性が高そうだし…採用情報も少ない…そもそもどんな会社があるの…どうすればいいのか?と悩む人も多いかと思います。
ただし、実はこの業界「自分は演出です」「自分は○○です」と言ってしまえば、通ってしまう世界でもあり、大御所・若手を問わず「現場たたき上げのフリー」と会社などの団体に属さないという人間も少なくはありません。
一方で「就職」を考えた場合はどのような方法があるのでしょうか?
皆さんの将来の仕事の一つとして考えるためのキッカケとして読んで頂ければ幸いです。              

1.まずはどのようなスタッフの仕事があるのか

プロの職業は役割分担が細かいので、今回は一般的な大きな職の括りで
3つにまとめます。
※例えば「大道具」でもデザイナー・大工・転換要員などに分かれます。
(現場は更に細かい職能があります… また下記のABCに当てはまらないコトも多々あります)

A:「音響」「照明」など専門会社 または「音響・照明・大道具」
  といったセクションごとの会社や総合会社がある職業

  • 音響
  • 照明
  • 大道具
  • 舞台監督(演出部)
  • 小道具
  • 電飾
  • 映像
  • 特殊効果
  • 衣裳
  • 部屋メイク・床山
  • メイク
  • 制作(公演企画・宣伝広報・営業・製作・制作・制作助手)
  • 案内(シアターフェイス)

B:指定管理者(上記の総合会社など)や地域や劇場自体が法人化して
  生まれる職業 

劇場・ホールの

  • 劇場・公共ホール・会館
    管理/機構操作/舞台進行
    票券/案内
    企画製作

C:基本的に個人だが、劇団などに所属する場合がある職業

  • 演出家(演出助手・演出補)
  • 劇作家
  • 作詞/作曲家

2.その仕事へどのように就くか?            

では、どんな流れで「舞台スタッフ」に就職していくのか?
多くは下記の5つ(それぞれ絡んで、本当にいろいろな人生があります)

  1. 学校で学んでから就職
  2. アルバイトから就職
  3. 劇団に入って就職
  4. 資格を活かして就職
  5. 直接連絡して就職

①学校で学んで就職(大学や専門学校)               

現在舞台スタッフにつくために1番多いルートが学校から就職する流れです。「演劇 学校」で検索すると大学や専門学校合わせて全国で150校くらい出てきますが、ほとんどは「表現者養成の学校」なのでスタッフコースがあるか確認してください。

学校経由の場合は、先生方が現役スタッフという事も多く、学生の適正に合わせた斡旋を行ったり、採用側も学生がどの程度の技術があるかなどの情報が入ってくるので就職の確実性は高いです。

スタッフコースと一括りになる場合のほか「音響・照明・大道具」は演劇ほか
TV映画関係の需要もあり、専門のコースとして設定されている所が多いです。  
逆に「舞台監督・演出部」は少なく、公演(学校の発表会など)の都度に誰かが舞台監督を任されて、先生や先輩に教えられて覚えていくコトが多く、コースがあれば希少です。(舞監コース大事だと思うのですが…人気ないのかな?)

 アートマネジメントの学科がある場合は「制作」関連のコトを学べます。
こちらは制作のほかに「公演企画」「マネージャー」などになる人もいます。

また芸術・音楽・建築など「演劇」と直接銘打っていない下記の学校では 
「映像」はTV映画系のコースから「衣裳」は被服系「床山(ヘアメイク)」は美容師系の学校から。「舞台美術(装置)」や「小道具」は美術・建築系の学校からのルートもあります。

「建築照明を学んでいたが舞台照明になってしまった!」みたいな人もいます。
(建築を学んでいて、なぜか演出家になった人もいますね)

②アルバイトから就職

イベント系のアルバイトを続けているうちに、仕事を覚え採用される感じです。
ただし、どんな仕事をさせてもらえるのか、現場に入るまで判らないのが難点。いろんな業者のお手伝いをするので、顔つなぎには良いかもしれません。
未経験者歓迎の求人は常に出ていますし、稀に舞台機構や特殊小道具などの求人もあります。

舞台の作法や言葉を現場で覚える実学主義!今からでも登録可能!といったところが多いです。
慣れたバイトと、就職直後の新人の動きの差は一目瞭然、一度働いてみるのも
お薦めです。
目的意識がある人は、その分仕事が出来る人が多いのでバイトチーフになり永住することも…
まぁブラックとまでは言いませんが、採用条件通りの所は極少だとは思います…

③劇団に入って就職

学校に入らなくても、劇団の一員(もしくは手伝い)になることもできます。
座付きスタッフのいる大きめの劇団などで仕事を覚え、伝手いや業者を探していく感じです。
ただ、劇団の付き合いのある業者がある程度固定されるため、他にどんな会社があるかは自分で調べる必要があります。稽古場から公演まで一通り何でも手伝うのでスタッフとしての「潰し」は効きます。

役者でも照明を吊り込んだりしているうちに、機材の名前を覚えていきます。(友達の劇団を手伝ってたら仕事や業者さんを覚えた!という人は多いです)

劇団自体に所属する場合は、劇団は家族的!な所もあるので、給料、休日、待遇などは疑問…古い人間には多いパターンです。

④資格を活かして就職

資格があって演劇や舞台に興味があれば、職種の幅もかなり広がります。入社前に資格を取っておけば、採用の確率は格段に上がります。舞台機構調整技能士は主に音響照明は認定資格がありますが、入社後に取得する人も多いです。

電気工事士は「電飾」危険物取扱は「特殊効果」大型運転免許「トランポ」などの資格を有していますので、資格所持(または入社後にすぐ取得)が採用条件となったりします。

就職のルートは後述の「直接連絡して行く」とセットですが、より強いアピールになります。

⑤直接連絡して就職

採用担当に直接連絡したり、バイト募集広告を見て「就職したい」と行くパターンです。
音響や照明の会社では「演劇部で音響・照明やってました!」と応募してくる人も割といます。高卒で入社して、若くしてプランナーになる人もいます。
若いうちは「好きこそものの上手なれ」で、体力も気力もあるので、会社側も重宝しますし、当たって砕けてもへこたれなければ、有効な手段だと思います。

例えば大学生だと、これから改めて大学や専門学校に入り直すのは厳しいかもしれません。ですが、志望動機を考えるのは普通の就活と変わらないので頑張ってみてください。

高校生は、選択肢として演劇芸術学校があるものの周囲からの意見によって「卒業後」のコトを考えると悩むかもしれませんが、オープンキャンパスなど説明会に参加して不安を無くすことをお勧めします

3.就職を考える時の注意点

稽古・仕込みの準備・仕込み・公演とスタッフがいなければ舞台は動きません。
公演期間は長時間拘束、公演期間以外でも休みがなかったり…そんな○○○○な職業です。状況によっては旅公演で数か月~1年程度帰って来ないという事もあります。会社によってバラバラではありますが全体的に給料も決して良いとはいえません…

それでも、就職したいという場合は漠然と演劇業界で働きたい…というよりも
・その会社が関わっていた公演が好きだ!
(公演の規模などを知っていると採用側も安心です)
・その会社に目指すプランナーがいる
(プランナーが代表者に多い。またその技術を目指していると捉える)
・その会社が得意なジャンルの公演に関わりたい!
(芝居の照明はせずにバレエとかコンサート照明だけとかの会社もあるので…)など目的があった方が、上手く行きます。
ちょっとネガティブなコトを書きましたが、やはり自分のスキルや得意なことが活かせる楽しい仕事ではあります。

いろんな芝居を見ることが出来たり、1回公演の時は実働5時間くらいだったり、旅公演で全国の美味しいモノ食べたり観光したり、役者と仲良くなったり、そんなトコロで皆さんバランスを取っています。

この他にも演劇を支える仕事はあります

上記で挙げた以外にも演劇や劇場・舞台を支える機材を作ったりする業者もあります。直接公演に関る事は少ないかもしれないですが、例えば最近では舞台映像の配信機器やLED機材とかプロジェクターなども含めて、各機種の業者さんのお陰で最新の舞台エンタメを成立させることが出来ています。

  • 音響や照明などの機材を造るメーカー
  • 機器のレンタル業者
  • 世界の新しい機材などを紹介する業者
  • 規の劇場や改修時に建築や機材のコンサルタント

こういう業界にも興味を持って頂ければ嬉しいです。

ー2018年「しばいのまち」の記事より転載・一部変更ー

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