オールLED劇場は夢か現実か?

Closeup colorful LED lights

LED化の理想と現場の現実

先日、劇場コンサルタントの方と劇場照明の今後について意見交換をする機会がありました。私は、電球型(ハロゲンなど)の灯具がまだ完全になくなることはないだろうと考えているのですが、その方は「今やLED以外の照明器具は提案しない。新しい劇場はオールLEDが当たり前」という立場でした。

理想と現場のギャップ

もちろん、その意見は理解できますし、いずれはその方向になっていくと思います。しかし、実際に現場で作業する照明スタッフの立場から見ると、「全灯具がLED」という劇場は、正直なところまだ使いにくいという声が多く聞かれます。
私がいた劇場でも、約10年以上前の改修工事の頃から「省エネ」「LED化」という声は既にあり、蛍光灯は完全に全廃になる、その次はハロゲンもと言われていました。しかし、現在でも多くの劇場で従来の電球型灯具が併用されています。完全にLEDだけという「直回路のみ」の劇場は、まだほとんど見られません。

ツアー公演の課題と制御電源の問題

この背景には、現在の興行形態の一つツアー公演が大きく関係していると感じています。例えば、東京で上演された作品が地方を巡回することはよくありますが、全国の劇場で全て同じような照明設備を持っているわけではありません。

そのために限られた予算の中で、すべての照明機材を持ち込んで上演するのは現実的ではなく、多くの場合は劇場備え付けの灯具を最大限に活用して、工夫を凝らすのが実情です。

つまり、劇場側がどれだけ最新のLED灯具を導入しても、劇場ごとに機材が異なれば、灯りのデータは当然変わってきます。これでは、劇場が変わるたびに多くの時間を費やして灯りを修正する必要があり、効率の面では課題が残ります。

また、この問題で重要になるのが制御電源です。LED灯具は基本的に直回路で動作するため、調光回路は不要です。これにより、劇場内の大きなスペースを占める現在の調光ユニットが不要になり、オン/オフができる小さな回路だけで済む、というメリットがあります。これは劇場設計に大きな影響を与えるため、新築や改修の際に直回路と調光回路の比率をどうするか、そして従来の灯具とLED灯具をいかにスムーズに併用できるか、という点が大きな課題となっています。

共存の時代

技術は日々進化していますが、それをどのように現場に活かし、スムーズに移行していくかは、まだまだ模索の途中だと感じています。LED灯具の導入は確実に進んでいますが、現状では、従来の灯具との「共存時代」がもう少し続くと思う。

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