舞台の名称 〜照明さん編①調光卓編〜

chとdim、デバイスとch、パラメータとch、DMXとuniverse、Art-NetとsACN…

名前は違えど言われている事は同じ事 のようでやっぱり違う。名称・呼称。いますでに働いてるメンバーでも漠然と深く意味まで知らずに使っていたりしています。となると、今から学ぼうとしている人たちにはよく分からない事もあると思います。そこでひとつ頑張って、そんな名称・呼称を紹介して行きたいと思います。

Chとdim

Chとdim とは英語の名称を省略して頭文字での表記になり、読み方としては Chはチャンネル。これは使用する卓の違いにより意味合いに若干の違いがありますが、基本的には仕込んだ照明灯体や器具・灯具を名称ではなく、通し番号の様に数字で表せるように名付けた番号を「チャンネル番号(Ch:チャンネル)」と呼びます。
実際に仕上図で使われる表記では、チャンネル番号を表わしたい時にchと書いて数字を書いたり(例:Ch71) 多角形(六角形など)の中に数字を書き込んで表示しますが、この多角形は絶対この形でなければならないと言う決まりはなく、会社やプランナーや国によって形が違う事があります。

そしてもう一つの数字表記が Dim:ディマーと呼ばれる物になります。ディマー番号または、回路番号仕込み図などで照明灯体(一般的な電球の灯体)の記号の周辺に、この2つの数字が並びます。ではこのディマー番号とは?
別名、回路番号。調光出来る電源口の名称を数字化したものです。会館によっては、何サスの①番とか、ステージ上手②とか固有名称の場合もあります。

プリセット卓とノンフェーダー卓

照明史的に言ってもガス灯の時代から初期の電灯用制御卓の頃まで、灯り一つ一つをひと所から多数制御する方式に苦心してきました。そこから生まれた技術の一つにプリセット卓と呼ばれるものがあります。
この卓の使い方は、他のサイト(「照明機材の盛り合わせ」さん)で詳しく書かれているので参考にして頂き、ここでは省略しますが下図の写真(日本で最大級の段数9段あったプリセット卓)の様に…

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9段プリセット卓

プランナーか明り作り中に作った明かり(シーン)は、各フェーダー番号ごとにゲージが決まるので、それを紙に書いて保存して、本番では舞台の進行に先行して、この明かり(シーン)のゲージを複数の段に準備しておき、必要なタイミング(きっかけ)になったら、この必要な段(明かりのシーン)を指定してクロスフェーダーを返すことで、今舞台上に再生されている明かりから、指定した段の明かりに変化させる方式の卓になります。
この卓では、通常くみ屋と呼ばれる各段のフェーダーを決まったゲージに組む人と、クロスフューダーを返す(単にクロスとも呼ばれる)オペレーター(運転手とも呼ぶ)の2人以上(くみ屋が2人以上の場合もある)での作業になります。
(Pre Set:Pre事前に、Set準備する)

対して最近の卓はノンフェーダー卓と呼ばれるもの。別名コンピュータ卓とも、主にムービングライトを制御する卓なのでムービング卓とも呼ばれています。

ETC社EosやGrandMa2 代表的なノンフェーダー卓

この卓の特徴としては、例えばプランナーが明かりを作っている時から、各Ch番号も出力するゲージも数字を使っているので10キー(電卓のような数字ボタン)だけで卓に入力し、出来上がった明かりのシーンもCue番号を数字を付けて、この作った明り(Cue)を再生させる、変化の時間も秒数(秒や分も数字)で保存・記憶されます。Cue再生はこのCue番号順に、舞台のきっかけが来たら「Go」ボタンを押せば舞台上に記憶された明かりのシーンが再生されます。明り作りや本番作業の中でフェーダーを使う必要がないのがノンフェーダー卓と呼ばれる由縁です。
(NonFader:Non無い、Faderフェーダー)


プリセット卓は、Cueの再生時にはクロスフェーダー(単にクロス)と呼ばれるフェーダーを手動で制御しますが、ノンフェーダー卓では、Cueの再生時間も数値化して秒数を卓に記憶させ、その時間通りに再現されます。
また、最近では制御される照明器具も多様化が進み、古くから使われて来た電球を使う一般的な灯体と放電管やLEDを使い制御Ch数の多い灯体や動く灯体も多くなって来ています。
そのためプリセット卓をアナログ卓/マニュアル卓/一般卓とも呼ばれ。ノンフェーダー卓をデジタル卓/ムービング卓とも呼ばれます。ただし、ノンフェーダ―卓なのに一般的な灯体しか制御しない卓も一般卓と呼んだりもします。

表記プリセット卓での意味ノンフェーダー卓での意味
Chフェーダー番号チャンネル番号
dim回路番号回路番号

おなじCh番号でも使用する卓がプリセット卓の場合は、その番号はフェーダーの番号と同じになり、フェーダー番号とも呼ばれます。(このプリセット卓の場合、フェーダーの本数が制御出来る本数の上限になります。例えば卓に60本フェーダーがあったら60チャンネル分制御できる)
使用する卓がノンフェーダ卓の場合は、このチャンネル番号が灯体の名称の様に、卓にゲージを入力する為の番号となります。
(フェーダーが無いので、制御出来る台数に上限は有りませんが、卓の性能によって変わります)

Ch と パラメータ

ノンフェーダ卓、特にDMX制御卓が登場した頃の制御上限は、DMXが何本刺さるか(出力口が何口あるか)?が制御の上限と同じ事を意味していました。しかし卓に使われるコンピュータの能力向上した事と、使われる機材(特にムービングライト等) 制御チャンネル数の増加に伴い、卓の裏側に差せない程の本数のDMXが必要となるケースが増えてきました。

そこで生まれた技術がLANコネクタ(RJ-45)でした。LANケーブルを使うことで数十本分のDMXケーブルがLANケーブル1本にまとられるようになりました。
(この際に何十本分ものDMXの情報を1本のLANに流す為に使われる言語(プロトコル)がArt-Netであり、sACNと呼ばれるものになります)

すると、いくらパソコン能力が向上しても演算処理出来る能力には上限はあります。そこで、その能力を表現するのに使われる様になったのが「パラメーター」という表現です。
パラメーター(parameter)とは、「変数」という意味ですがコンピュータの世界では、「プログラムの挙動に影響を与える、外部からの入力データ」という意味になります。
今ひとつピンと来ないですよね?照明の卓で行う動作で説明すると

Ch1の灯体を点ける為に フェーダー①番を100%まで上げた。

ある作品の明り作り中に

このフェーダーを0%から100%にする→パラメーターをいじる行為になります。
何故なら、外部からフェーダーを使ってデータを入力した訳ですから。

そうそう、昔はこの0%から100%とパーセント表示する事を「ゲージ」と呼んでいました、これは元々フェーダー横に付いていた数字の目盛のことを指す言葉から来ていますが、最近は「インテンシティ」と呼ぶ様になりました。これもコンピュータ卓の普及と共に変わってきた名称になりますが、意味は同じ「明かりの強さ」を表す数字になります。

機能の向上したノンフェーダー卓(ムービング卓)では制御出来る事が多いので、制御Ch数ではなくこの「パラメーター数」で能力の差を表示しています。