「演出部」「舞台監督助手」のお話です。

ネット検索でも、ほとんど情報の出ない「演出部」や「舞台監督助手」。(現在では)ほぼ同義語といっても良い、舞台監督を支える舞台進行チームになります。
舞台監督を目指す方の多くはこの「演出部」を経験して、いろいろな進行・作業を覚えてから舞台監督としてデビューします。

どんな仕事?

では仕事内容はどんな感じでしょう?
・言わずと知れた「演出家」
・演出家の隣にいて稽古の進行を司る「演出助手」
・演出家の代理ともいえる「演出補」
そして「演出部」は舞台上での実働部隊です。
演出家のイメージを舞台監督やプランナーの指示に従って、具体化具現化していきます。

❶稽古場や本番においての公演のスムーズな進行をする!

舞台監督の声が隅々に届く様な小さな公演なら、良いのですが、大きな公演だと舞台監督1人ではどうにもなりません…

そんな時に頼りになるのが演出部の皆様です。

【舞台進行の説明】

稽古場では、基本的には出演者と進行の説明や確認を行います。
持ち道具や出ハケの位置などを確認し、予定している転換内容などを説明します。

劇場に入ったら、現場スタッフに説明をするのも大切な役割です。
役者がどんなタイミングで出入りするとか、暗転になるとか、音楽が入るなど
劇場で始めて合流するスタッフに仕込みや芝居の流れ・転換の段取りを説明します。
舞台監督のきっかけとは別にピンポイントのきっかけを預かることもあります。

舞台監督は全体に、演出部は個別に対応する感じです。

【問題点の調整、解決】

例えば、転換について説明すると…
演出家と舞台監督が転換内容を大きく決めますが、実際の舞台上ではうまくいかない事があります。
何か問題点があれば演出部が立ち合って、稽古を止めての確認が必要かどうか考えて
客席から見える範囲の問題については演出家や演出助手などに判断を促したり
袖中での演出に絡まないようなトラブルは舞台監督や関係するスタッフと自分達で調整します。

(役者動線と大道具移動の調整また小道具の受け渡しの管理など)

とにかく、舞台上でも舞台袖でも問題点があれば、小さなものなら個別に解決。
大きな問題なら舞台監督や演出助手たちと相談しながら、スムーズに進行する様にします。

❷演出イメージの具体化!

まずは稽古を進めるために!

【必要なモノを揃える】

一番多いのは小道具や衣裳の作成や収集をして稽古で使えるようにします。

例えば)
演出家から「小道具で電話機が欲しい」と言われれば、どんな電話機なのかを確認して手配したり作ったりします。
どちらにしろ、国や年代、色や形なども詳しく調べ、それで良いか演出家と確認します。
(衣裳と違い、小道具プランナーがいる事はほぼないので)
また、いつ誰がどこで使って最終的にどこに置かれるのか?管理や整理も行います。

その他、細かい作業として

・インフォメーション(特に変更点の確認や時間、ページなどのリマインド)
・稽古場や本番前の準備(掃除や小道具の準備)
・代役や大道具の代わり
・バミリ取り(役者や道具の目印)
・消え物の準備(食べ物や飲み物の準備)
・小道具などを使える形にする(演出家や役者の要望に合わせたり、舞台セットに組み込んだり…)
・何か問題がないかチェックと解決策の提案
・安全のための作業(裏明かりや蓄光テープやササクレの処理など多数)
・役者の誘導やケア
などが挙げられますが、まだまだあると思います。

安全用のテープライト
❸何人くらいでチーム構成されるの?

公演の規模と制作の持つ人件費で大きく変わります…

上手下手(かみてしもて)担当に別れる場合もあれば衣裳担当や小道具担当などにチーム分けされる事もあります。公演の規模により人数は大きく増減します。
  (少ない場合は上手兼小道具的な組合せ、大きな舞台だと上手チーム下手チームが出来たりします)
役者も大道具転換を行う劇団の場合は舞台監督と演出部二人で行ったり、他のカンパニーでは専門の衣裳さんや小道具、大道具係を入れずに全て演出部にしてしまう舞台監督もいます。

❹労働環境:作業時間などは?

基本的に朝イチで、稽古場や劇場に入り、1番最後に帰る長時間勤務のセクションです。(制作さんと一緒か、やや遅い程度)

演出家の注文に細かく確認、劇場仕込みの時は休憩もままならず、舞台稽古では変更に次ぐ変更に、いち早く対応する臨機応変さが必要…と、文字にするとデメリット的な印象しか受けません。加えて気力体力判断力が求められるのですが…
稽古期間からずっと稽古場にいると、認識が変わってきます。
仕込みは大変だけど、図面だけの情報が目の前に立ち上がる楽しさ!
トラブルもいろいろなアイデアを試せて解決することでモチベーションアップ!
重なる変更も稽古場でから付いていれば大きなストレスにはなりません。
そして、何より役者からもスタッフからも抜群の信頼を得られる!
作業時間は1日12時間を超えることがザラですが、慣れると楽しい。
とにかく、よくできるな…と思います(やってたけど…私でも出来るから他の人もできると思います)

❺就職する?

公演の規模によって作業内容やチームの人数がかなり変わりますから、演出部になる人は割となんでもこなせる方が多いです。といっても、いきなり対応できる人は少ないので仕事をしながら覚えていき、得手不得手もありつつ成長していきます。

とにかく演出部の一員になってから、自分の得意分野が伸びる人も大勢います。
衣裳担当や小道具担当になるヒトには元々の得意な事を活かしている人も、始めてから得意になった人もいます。 とりあえず掃除が出来て、小道具などの整理が出来れば演出部に入れると思います。

どんな能力が必要か?

やってみたい気持ち!一番大事なのは気持ちです。資格とかいりません。(何か必要なら後から取ればいい)

では、どんなカタチで就職するか?というと
舞台監督会社に入るか、劇団の演出部やスタッフに入る方法が多いです。
「舞台監督」として募集をかけている会社よりも「演出部」や「舞台監督助手」などの名目で募集している会社をおすすめします。
小劇場系の舞台監督下でアルバイトという話も聞きますが、スキルや人間関係を考えると初めは就職をオススメします。

➏演出部の名前の由来?

なぜ演出部と呼ばれるかというと,,,かつての劇団はそれなりに人がいて劇団内で脚本から公演まで手掛ける事が当然でした。演技部・制作部・文芸部などと並んでの「演出部」

この時に舞台上の演出面での作業をする「演出家」「舞台監督」「音響・照明・大道具・小道具」などをまとめて演出部と呼んでいましたが、音響さん照明さん大道具さんなど個別に呼んでいるうちに名称がないのが舞台監督助手のチームだけとなり「演出部」という名称が残りましたとさ。

諸説あります※

色々と書きましたが「演出部」を雑用係のように受け取る人もいますが、演出に関すること以外の仕事を請け負う必要はありません。一番忙しいセクションなんだから!とはいえ、一昔二昔前にくらべ格段に楽になったと思います。調べモノはネットで検索、その後はAmazonに発注、お金さえあればポンポンと進むことでしょう…お金がなければ遣り甲斐で勝負!みなさん頑張ってください!

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