演劇関係に就職する?(舞台スタッフ以外の選択肢)

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演劇関係に就職したい方は、たくさんいらっしゃいますが、直接舞台上での仕事以外にも、この業界に関わるチャンスは色々とあります。探せば自分の能力に見合った仕事が見つかると思いますので、就職先など探している方はこの記事をご一読ください。(就職を保証する記事ではありませんので悪しからず…)

制作関係

直接、舞台に関わらなくとも演劇や劇場に関わることは出来ます!

宣伝広報/チラシ・パンフ・グッズ

チラシやパンフレットの作成・構成・デザインなどを担当します。
制作業務の一部の場合もありますが、印刷会社などが引き受けていることが多いです。グッズについても基本的にはロゴマークや写真を使ったものが多いため、デザイン部門を抱えている印刷会社や演劇専門に扱う印刷会社、ノベルティ専門の会社が得意とする分野になります。

案内・誘導

いわゆるおもてかた(表方)です。劇場専属の案内係の他に、案内係や誘導員を派遣する会社があります。
公演日程のシフトによって、様々な劇場で活躍します。チケットもぎり、案内誘導やお客様トラブル対応の他に現在のようなコロナ禍では、お客様の検温対応、客席やロビーの清掃消毒作業なども業務範囲になります。

劇場売店・喫茶

あまり募集があるわけではありませんが、大きな劇場では売店や喫茶コーナーを受け持つ業者があります。
公演を見ることはできませんが、雰囲気を毎日感じる事は出来ます。たまにキャストが立ち寄る事もあるかも…?劇場専属の業者や、大手飲料会社(酒も含む)や案内人材派遣会社の一部門の事もあります。

舞台スタッフ関係(公演準備)

公演に直接関わる仕事と公演をサポートする仕事があります。ここでは公演を準備からサポートする仕事の紹介です!

通訳

海外の演出家をはじめとするスタッフ・キャストがいる場合に活躍する通訳さん。一番多いのは演出家やプロデューサーの通訳をすること。特に演出家の通訳は見ているだけでも大変!でも、楽しそう!
一般的な通訳業務に比べ、専門的な舞台用語や演出意図を正確に伝える難しい仕事ですが、むしろ担当する人物に付きっ切りでいる事の方が大変かもしれません。海外スタッフの良きお話し相手でもあります。

楽器レンタル・設営

ミュージカルのオーケストラや公演で使われる楽器を貸し出す会社です。
演奏者自身の楽器を使う事もありますが、パーカッションなどはこういった業者が設置します。

あまり多くないのですが、日本の商業演劇は初日が重なることが多いため、月末~月頭はあらゆる稽古場と劇場で仕込み搬出などの作業があります。交響楽団専属のオーケストラマネージャーとは別の業務になります。

搬入出&仕込み増員

舞台で一番人員が必要な仕込みとバラシの増員を受け持つ会社です。
ほとんどが大学生くらいのアルバイトですが、彼らを率いるチーフが入ります。チーフクラスになれば舞台監督たちからの指示を正確に確認したり安全面の配慮、各セクションの基本的な作業知識や時間管理なども必要となります。
まれに転換要員として本番業務に従事することもあります。

トランポ

トランスポーターの略で運送屋さん。といっても舞台専門の運送屋というものがあり、公演の為に北は北海道から南は沖縄まで全国何処でも駆けつけてくれる、いわゆる「旅公演」には居なくてはならない存在です。劇団四期をはじめ、古くからある劇団は自前のトラックで、商業演劇だと運送業者が頑張ってくれます。長い旅公演では、次の劇場で仕込みやすい順番にトラックに積んでくれる上に、運転手さんが仕込みまで手伝ってくれるようになることだって昔はありました(昨今はコロナでNGですが)仲良くしてくれたトランポさんは、公演中はやることがないので本番を見ていて、転換の内容まで把握した上で旅公演に付き合ってくれていました。(舞台袖中でのモノの置き位置などを先読みしてくれるというすごい人でした…)

字幕

海外公演やオペラの原語上演、歌舞伎などで使われる字幕機材を扱う会社です。
翻訳された歌詞や情景の説明を、使用する表示器の文字数の制限や人が数秒で認識できる文字数を考慮しながら、制御コンピュータに落とし込みデータ化にする作業、公演時には機材の仕込み、セリフの進行に合わせて字幕を送る作業(画面テロップのように「GO」ボタンで進んで行く)なども含まれます。
(字幕とともに音声で説明する。イヤホンガイド(国立劇場や歌舞伎座ではおなじみです)という会社もあります)

映像(ITV/収録/映写/ソース作成)

近年増加している舞台で使われる映像。
一言で映像と言っても、似て非なる作業の事があります。
パンフレットの表記も「映像」が多いかな?

  1. 舞台や指揮者などの映像を必要な場所に送り、視聴する為のTVモニターを各所に設置する「ITV」
  2. 撮影カメラを設置し本番公演を収録録画。配信や販売DVDなどする「収録」
  3. 舞台上にプロジェクターや巨大なモニターを設置して、演出効果の一環で映像を映し出す「映写」
  4. 「映写」時に使う素材(写真や文字やGC画像など)を加工しソースデータを作る「ソース作成」  

これら全て「映像さん」と呼ばれますが、それぞれ得意とする別々の会社が担当することが多いです。特に④は、業者自体の数が少ない印象です。
(①②③は会社の規模による。②で収録したモノを④で編集する事もあるようです。)            

電飾 

近年LEDで扱うことが多くなりましたが、大道具や舞台を装飾したり、セット内の小道具(スタンドやブラケット)、果ては、たき火に見える様な特殊効果器なども扱うのが、この電飾さんになります。
点灯・点滅など制御に関しては、照明と分担したり、電飾さんで制御することもありますが、装飾に使われる電球やLEDの設置・施工については電飾の業者が担当します。
電源ケーブルが使えないセットや演出も最近は多いので、バッテリー(充電池)の利用も多くなり、これらの扱いにも精通しています。
電気工事士の資格があれば業務的に重宝されるでしょう!会社によっては、入社後まとめて資格が取れるようにバックアップしてもらえる会社もあります。

特殊機械

特殊な業者です。
劇場機構と違い、その舞台セットに合せた機械を作成・設置、公演期間中の操作も担当したりします。仕事としては劇場以外にもTV局や撮影所、コンサート会場などへも同様の対応や開発した既存製品のレンタル業務なども行います。
紅白歌合戦に出てくる口から煙を吐く竜とか巨大なアレとかも含まれます。

特殊小道具

普通の小道具会社が基本的に既存品のレンタルなどを使用する事が多いのに対して、存在しない小道具を制作する業務です。
例えば、鎧兜に弾着(火薬を仕込んだ衣裳や小道具)や光るマシンガンとか変形する刀、やたら巨大なぬいぐるみなど、とにかく普通に入手出来ないモノを作ります。多少の仕掛けは演出部の小道具担当でも行いますが、大量に揃えるモノなど演出部では手が回らない時にお世話になります。おそらく演劇以外にも特撮系の小道具なんかも作っているのでは…?

フライング

フライング(宙吊り)の仕掛けと操作を行う会社です。
タイミングよく安全に昇降させる為、念入りな打合せや稽古(同僚を代役として飛ば安全を何度も確認してから役者さんに稽古してもらったり)はもちろん、体力、気力、集中力、記憶力が必須!
引き上げる力が必要な事から女性には、厳しい仕事かと思っていましたが、近年少しづつ就職希望者が増えているとか?電動化による軽減なども要因の一つかもです。

劇場や公演を支える仕事

そんな仕事があるんだ…って思う方も多いはず。でも、こういう関わり方もあるんです。
LED化が進んだ時に、舞台メイクに相応しい照明機材を作る人がいたから、歌舞伎にLED機材が使われ始めましたとさ。それまでは毛嫌いされていたのです。あと演劇以外にもテーマパークやTV局などでも仕事があります。

舞台の為に色々な商品を開発をするお仕事もあります。

カーテン(幕地)/緞帳/椅子/絨毯

劇場やホールのカーテン・緞帳/椅子/絨毯などを作成する会社もあります。
公演を見られる事は、ほとんどありませんが様々な劇場に携わる事が出来ます。コンクリートや鉄骨で無機質な劇場が、観客を迎え入れる為の表情に変わっていく工程を見ることは、他の仕事ではなかなかできません。幕地を扱う会社では、舞台セットのドロップ(幕類)などを扱う会社もあります。

機材/消耗品販売・開発

舞台上で使ういろいろな機材や便利な物品や照明(色・電球)やメイク道具などの消耗品を扱う業者もいます。
営業と開発を兼ねる人が多い雰囲気。実は彼らがいないと成り立たないのでは…?と思うことも多いです。

開発はキチンと舞台を見て、話を聞いてニーズを掴まないと出来ないので難しいといえば難しい仕事。舞台上でどのように使われるのか?使うのは誰なのか?そして、儲かるのか?「これ特許取ってるの?」と思うようなモノが舞台にはたくさんあります!

インカム/通信

トランシーバーをはじめとする通信やインカム系の業者もあります。
販売/レンタル/設置工事などがメインで劇場だけでなくTV局やアリーナなどでも仕事があり、多くの現場を体験します。とにかく舞台のオモテでもウラでも使われる機材で、コロナ対策でまた需要が増えました!納品納入よりもトラブル対応の方が仕事は多いかも…

劇場コンサルタント

公演よりも劇場の新設や改修する時に、相談窓口となる会社。
施主の希望をまとめて、方針を提案する仕事です。施主側か劇場側かコンサルが入る立場によって事内容が若干変わりますが、工事の安全面や作業のしやすさ、工事期間、予算など諸々を比較検討し、与えられた条件の中でベストな劇場づくりを目指します。建築士などの資格があると強いと思います。またこのポジションに演劇に対する熱意がない人が入ってしまうと、、、劇場と演劇を愛する方!ぜひ門戸を叩いてみてください!

正直、採用基準は…わかりません

収入など待遇もまちまちだと思います。しかし不規則な生活になることは確実です。演劇系の仕事に就くというのはそういう事です…一方でTVや映画業界よりは、はるかに規則的な生活を送れるはずです。ただ、一般の企業に比べ、いつ人が辞めたり入ったりするかも不規則な業界ですので、年間を通じてとにかくチャンスを諦めずに連絡を取ってみる!というのも大事な一歩かなと思います。

演劇関係の仕事に就くには?音響・照明・大道具など演劇をやっていて、聞き覚えのあるセクションの会社を訪ねる人が多いと思いますが、視野を広げると演劇を支えるもっと多くの会社がヒットするはずです。

そして、いろいろ探すときに役に立つのが”公演パンフレット”!

気に入った公演や興味のあるモノがあったら、そのパンフレットのクレジットに書いてある業者にアプローチしてみるのも良いかと思います。ただ何となく音響・照明・大道具などになりたいと思っているより、「この仕掛けがすごかった」「このデザイナーさんすごい!」といった動機や関心の面でとても良いと思います。

(クレジットが今回の記事と異なる場合がありますが、上記「映像」のようにそんな事もよくあります。)

今回のご紹介はここまで 就活している方、色々悩んでいる方、参考になれば幸いです!

「舞台スタッフとして就職する」も併せてご覧ください!