学校で2年から4年間、専門知識や技術をみっちり学んで、「いよいよプロの現場で力を発揮するぞ!」と意気込んで飛び込んだものの…
「えっ、展開が速すぎる!」
「先輩たちの言っている専門用語が、呪文にしか聞こえない…!」
なんて学生時代とのギャップに愕然とし、右も左も分からない…そんな風に感じていませんか?
「このスピードについていけるだろうか」「ちゃんと貢献できるだろうか」
と不安になることもありますよね。
舞台の現場は独特の緊張感があり、一日いるだけでも気力・体力を消耗するものです。
でも、安心してください。誰もが最初は新人です。
そんな不安を少しでも軽くし、着実に現場に慣れていくための次のヒントは「時間軸」と「言語(舞台用語)」を周りのスタッフと合わせることです。
ステップ1:「時間軸」を合わせる ~現場のスピードと流れを掴む~
劇場入りしてからの現場は、様々なセクションが連携し、まるでパズルのように同時進行で作業が進んでいきます。驚くほどのスピード感に、「自分が流れを止めてしまうかも…」と焦りやプレッシャーを感じるかもしれませんね。
ここで言う「時間軸を合わせる」とは、この現場全体の進行スピードや段取り(タイムスケジュール)を意識的に把握し、自分がどのタイミングで何をすべきかを理解して、周りと足並みを揃えることです。
自分の部署(セクション)の動き:
- 本番前(仕込み、リハーサルなど)は、どのタイミングでどんな準備や作業をしているか?
- 本番中は、具体的にどんな役割を、どのタイミングで担っているか?(きっかけ、転換など)
- 終演後(バラシ、撤収など)は、どんな手順で片付けを進めているか?
他の部署との連携:
- ある特定の時間帯(例:開場前、休憩中、終演直後など)に、他の部署はどんな動きをしているか?
- 自分の部署の作業は、どの部署の作業に影響を与えたり、逆に影響を受けたりしているか?
最初は、自分の部署の仕事の流れを把握することから。慣れてきたら、徐々に視野を広げ、他の部署の動きや全体のタイムスケジュールとの関係性にも目を向けてみてください。
「今、全体としてはどの段階なのか」
「次に何が起こるのか」
を意識できるようになると、自分の動き方も自然と変わってきます。スケジュール表をこまめに確認したり、分からないことは前編でも述べた様に、遠慮なく先輩に確認したりするのは、も有効です。
ステップ2:「言語(舞台用語)」を合わせる ~現場の共通言語を習得する~
時間軸を意識し始めると、次に出てくるのが「言葉の壁」です。
現場の先輩たちは、皆さんが学生時代に使っていた言葉とは少し違う言い回しや、その現場・カンパニー特有の呼び方、略語などが飛び交っていることに気づくでしょう。それは、まるで異世界の言語を聞いているように感じるかもしれませんが、心配はいりません。
これらの「現場用語」は、多くの場合、効率的に情報を伝えたり、誤解を防いだりするためにその現場、会社の流派で、自然発生的に生まれたものです。ですから、発生箇所や経緯が異なる学生時代に使っていた言語と違う言い回しや表現になるので最初は分からないものです。大切なのは、「あの言葉は、〇〇のことを指しているんだな」「こういう指示は、こういう意味なんだな」と、一つひとつ吸収して自分の持っている知識の辞書を照らし合わせていくことです。
- メモを取る
分からない言葉や、学校で習った言葉との違いに気づいたら、すぐにメモを取りましょう。 - 質問する:
タイミングを見計らって
「すみません、今の〇〇とはどういう意味ですか?」
「それは、学校で習った△△と同じ意味ですか?」など
具体的に質問してみましょう。恥ずかしがらずに聞くことが、習得への一番の近道です。 - 使ってみる
教えてもらったり、意味が分かった言葉は、意識して自分でも使ってみましょう。
実際に使うことで、より深く理解できます。
この「アレのことを、ここではこう言うんだ」という発見と理解の積み重ねが、あなたを現場のスピードに順応させスムーズなコミュニケーションを可能にし、結果的に仕事を効率的にこなせる力に繋がっていきます。
このように、「時間軸」と「舞台用語」を周りと合わせていく努力は、単に作業を覚えるためだけではありません。
これは、あなたがチームの一員としてスムーズにな一員として機能し、周りから「安心して任せられる」と信頼されるための非常に重要なプロセスなのです。
最初は難しく感じるかもしれませんが、「合わせよう」と意識し、観察し、質問し、使ってみる。
これらを意識的に繰り返すうちに、必ず自然と身についていきます。
焦らず、一つずつ、あなたのペースで挑戦してみてください。
プロの舞台創りの一員として、あなたが活躍されるのを楽しみにしています!