劇場での「灯り」の違いについて

architecture room indoors auditorium

バレエ・オペラ・歌舞伎(能・狂言)・演劇・ミュージカル

これらの作品での「灯り」の違い・特徴・特色に何があるのか?

バレエ・オペラ・歌舞伎(能・狂言)・演劇・ミュージカル
この並び方は、概ね発祥順に並んでいますが、一番古いバレエ・オペラは共にルネサンス期(14世紀~16世紀頃)のイタリアが発祥と言われており、歌舞伎(能・狂言)が登場する17世紀頃には、ロンドンでシェイクスピアが盛んに上演されている。そんな時代の演劇史的には、劇場が半屋外の舞台から、舞台が完全に屋内になって行く頃になります。そうなると照明史的には、半野外劇場では太陽を活用しつつ、屋内の劇場では、松明やロウソクを照明として使い始めた時期でもあります。

オペラの名作と言われる作品は、18世紀末に多くが誕生しており、バレエの名作と言われる物は、19世紀に誕生している。この誕生した時期が、明かりの基本的な考え方のベースにある。
古典とも呼ばれる作品の照明のベースには、太陽光を意識し影の少ないフラットな明かり、ボーダーライト様な明かりが好まれる傾向にあります。これは洋の東西を問いません。その中で、名作品の発表時期のちょっとしたズレと何を見せたいかによって少しずつ違いが生まれてきています。

crop female ballet dancers sitting on floor in studio
Photo by Budgeron Bach on Pexels.com

バレエは、セリフは無く、踊りで全てを表現する為にも、踊っている場所を幕物などで使って表現し、舞台の転換を早く行える上にダンスエリアの確保をしている。そして、何よりも踊り手を際立たせる為に、舞台袖からの照明(StageSide(SS))を活用している。

architecture building evening exterior
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オペラは、セリフを歌で表現し演技も通常の演劇と同じなので、アクティングエリアはそれほど広く必要ではない為、名作の登場した当時はフラットなボーダー明かりで陰影がない様にしていたが、現在の西洋のオペラでは、「1スポット1シャドー」(1台の光源で1つの影)と言われる程、太陽光のような自然な明かりを表現する事が多い。

歌舞伎(能・狂言)も登場年代が同じ頃で、明かり的な特徴は他の2つと同様にボーダー明かりを中心とした、影のない明かりが良いとされています。
ただし、歌舞伎が盛んだった江戸の芝居小屋は、半野外と言っても良いくらいに舞台面に外光を取り入れて、昼間に上演するのがほとんどでしたが、歌舞伎特有の隈取りはロウソクで暗闇に浮かぶ事を計算に入れて作られているので、現代の様にフラットな明かりで見る物ではないかもしれません。

化粧と言えば、バレエの独特なメイクも表情がよりはっきりと見える様に、顔の陰影をかなり強調しています。

バレエ・オペラ・歌舞伎と登場時期のほぼ同じような、古典・クラシックと言われる作品の照明は、ボーダーライトを含め地明りが太陽光の様に舞台上に影が出来ない様に明りを作る事をベースにして、その中でも何をより良く見せたいのかの違いと、時代の進化と共に表現出来る器材や演出が進化した事が現在の「灯り」の違いとなっています。

また、この進化は歩みを止めておらず、現代のバレエ・オペラ・歌舞伎は全く違ったアプローチで演出されていると先程述べた「灯り」の特徴が全く当てはまらない作品も出てきています