マゼルとワケル

smoothie ingredients blending in blender

mixとsplit(混ぜると分ける)

舞台の技術のコラムなのに、「混ぜる?」「分ける?」と料理コラムにでもなったような事を言っていますが舞台技術の世界でも結構使われているんです、この「マゼル」と「ワケル」。
それぞれ現場で聞こえるのは「mix」「split」と呼ばれる機器で使われています。

照明のマゼルとワケル

照明の世界でマゼル→「Mixer(ミキサー)」というと、一般的に「DMX Mixer」と呼ばれる機器を指します。DMX信号は照明器具を制御するためのデジタル信号ですが、この「DMX Mixer」で複数のDMX信号を1つにまとめる事が出来る機械になります。

DMX Mixer の役割

複数の卓からの信号の統合:

調光室に設置されたメインの調光卓の他に、万が一のバックアップ卓を設置したりします。この時に両方の卓から出力されるDMX信号を「DMX Mixer」で1つにまとめることで、照明器具に送る信号を一本化できます。
メイン卓とバックアップ卓で運用している場合に、一部の卓ではメイン卓側のみDMX信号を出力して、メインが死んだ時にシフトする様な卓もあるが、基本的にはメインとバックアップ卓から同時に同じ信号を出力している状態です。
2つの卓から同じCUEのDMX信号を出したとしても、実は二つの卓からの信号は微妙にズレます。電球などの反応速度が遅いものではそんなに気になりませんが、反応速度の速いムービングやLEDでは、光源のちらつきやシェイクの原因になります。

このようなトラブルを避ける為にも「DMX Mixer」で、どちらか一方の信号だけを通すように設定します。
 この際に「高いデータ値を優先する(HTP)」や「低いデータ値を優先する(LPT)」などの状況に合わせた適切な設定を選ぶことができます。

もう一方のワケル→「Splitter(スプリッター)」というと「DMX Splitter」と呼ばれる機器を指します。「DMX Mixer」とは逆に一つのDMX信号を複数に分ける事が出来る機械になります。

DMX Splitter の役割

一つの信号の分割:

会場的に、DMX配線しかない場所で良く使う機械です。1つのDMXから出力される信号を複数のDMX機器に分波分配(パラう事が)できます。これにより、1つのDMX回線で複数場所に設置された照明器具それぞれへ信号を送信でき制御することが可能になります。

この時に「DMX Splitter」内部では、DMX信号の伝送距離が長くて弱くなったDMX信号を補強して各機器に送り出す事ができます。
また、DMX特有の問題である、末端処理(ターミネート)を行う事も出来て、DMXケーブルの最後の灯具からDMX信号の反射波による、ノイズで他のチャンネルに影響が及ぶのを防が事もできます。

他の部署のマゼル

たまに聞くのですが「卓」の事を「ミキサー卓」と呼んで、照明の卓を指している事を見かけます。勉強中の方に多いと思いますが、卓と名がついてるのだから何が違うの?と思いますよね?

先程の「mixer」の項目で説明した通り、入ってきた信号を「マゼル→1つにする」事を「mixer」と言いますね?これを卓に当てはめて考えると「マイク」や「音源再生機」「映像カメラ」から入ってきた信号を「マゼル」そして「必要な箇所ひ送る」作業を行う卓が「ミキサー卓」となり、音響さんや映像さんが使用する卓は「ミキサー卓」と呼ばれるものになります。
では、照明の卓に当てはめようとすると・・・
照明の卓には、基本外部から信号は入力しませんので、入ってきたものをまとめる事ないので、照明卓は「ミキサー卓」とは呼べませんね。
ただ、同じ動きをする灯具をまとめて一つのチャンネルで制御する様に「パッチ」はしますが、この時に外部の信号を混ぜるのではなく、内部のチャンネルをまとめているので、前述の条件には当てはまらないので「ミキサー卓」とは呼べません。
では、照明の卓は何と呼ぶのか?
「照明卓」や「調光卓」、最近では「ムービング卓」などと呼ばれているものが照明の卓になります。

「混ぜる」と「分ける」他のもの

少し分かりにくいのかもですが、信号の種類が増えて劇場内のシステムとして考えた時に安全に「混ぜたり」「分けたり」したい個所で使用されるのが「DMX Mixer」と「DMX Spliter」と言うわけです。

ただメーカーによっては、一台の機器で両方の機能を持ったものもあり、この場合には制御ソフト上で内部のインとアウトを逆に出来るので、複数→1/1→複数 を切り替えて使う事が出来るものもあります。
 また、スプリッターの項目で会場に「DMX配線しかない」と条件を付けましたが、そもそも会場にEthernet(sACNやart-NET)が設置されている場合は、Ethernetの機能は「Mixer」「split」の機能がシステム的に持っているので、機器的に「Mixer」「split」が必要にならない事もあります。

ただ、会場によっては、Ethernetを完備していてもnodeをパッチしてくれなくて、結果「splitter」を持ち込んだり、「mixer」が必要になった小屋がある。なんて声もうちに来る照明さんたちから聞いたりします。勿体無い。