世界の舞台共通語? 〜海外招聘公演のお話〜

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海外からの演劇作品の引越し公演など、日本人対外国人での公演では基本的に通訳さんが入ります。

現地通訳(外国在住の日本人または日本語が出来る方)が間に入ることもまれにあります。

ですが以前、私が担当した公演では、制作兼通訳(この時点でどうゆう状況か推測できますかね?)
がテクニカル部分をしっかり丸投げして来ました…「私、舞台のコトワカリマセンので…」

中学高校と10段階評価で2や3が常習で英語なんて使えない我らの頼れる味方は翻訳ソフトのみ!
それも現在ほど性能も利便性も高くない頃の話なので、英語のメールで辞書を調べなくても済む程度。それも舞台用語は特殊な表現が多いと来た。

舞台中のことだけでも(ソフトの直訳では)
・旅人のカーテン?
・右と左の脚?
・飛ぶ棒?

とまぁ、こんな感じで直訳も直訳。肝心なところで意味が通じない、????だらけ。
大工さん?会社のマネージャー?どういう事?

とりあえず、英→日→英→日と、最低2回はソフトで翻訳を繰り返してみて、大きく意味が変わらない言葉は確定とする。地道な作業を繰り返しては、疑問を先方に返信。

この返信も、相手に通じるか意訳が合っているか?
日→英→日→英の要領でソフトで翻訳。で、チェック!

照明さんや音響さん衣裳さんは良いんです。舞台用語で共通言語がお互いに近いですから。

機材の名前でやりとりが出来ます。機材が分かればラク!
「source fourはあるか?」
「ある!何度のレンズが何台ある!100Vだが良いね?」

みたいな…

一方で大道具や小道具の仕掛けなんかは、文章では大変
「何センチのリングが欲しい」
といっても、何にどうやって使うのか?外径か内径か?太さや材質は?

一応の訳

旅人のカーテン → トラベラーカーテン → 引割幕など稼働する幕のこと
右と左の脚   → ライトレッグ、レフトレッグ → レッグは袖幕を指す → 舞台上手と下手にある幕
飛ぶ棒     → フライBAR  → 昇降バトンのコト(日本ではバーではなくバトンと呼ぶ)
大工さん    → カーペンター → 大道具さんのこと
会社のマネージャー → カンパニーマネージャー → プロデューサー(または制作の代表者)

それから数か月、いよいよ日本入りした彼らとの対面。
心強い本職の舞台専門の通訳さんが来てくれる事になりました。

舞台側に1人、オペレーター側に1人、そして丸投げ制作兼通訳(あてにはしていませんでしたが)

安心しきった我々に新たなる難関
英語なら大丈夫と思われた通訳さんにも解らない舞台用語発生!

「ホワイト!ホワイトを貸してほしい!」

この時の通訳さん英語は専門ですが、イギリス英語にアメリカ英語、同じ英語でもそれぞれの国で俗に言う「訛り」が違うのと同様に、舞台用語の単語も国によって微妙に違う。
生活用語ならなんとか分かるが通訳さん困る。通訳さん困ると我々はどうしようもない。
特にこの時の来日していたのは、オーストラリア人。

ある部材を指差して
「すまない、、、ホワイトを国に置いて来た、借りれらないか?」

そこからは連想ゲーム状態…白だろ?

ホワイトってんだから、色をぬるのか?絵の具?   「No!」
ホワイトってんだから、照明が欲しいのか?ゼラか? 「No!」
もしかして白いのは、チョーク?   「No!」
なんか、修正するのに使うの?(発想が戻ってるけどね) 「No!」

「ひゃくきろ」「・・・?」「白なの?百なの?」

中途半端に先方も頑張って日本語を使って伝えようと調べて発音するもんだから余計に混乱⁈

答えは、weightなのに、何故か彼らはwhaitの綴りを発音しており、訛り的にwを発音しないので、ホワイトに聞こえる。

「ひゃくきろ・・・100㎏か・・・?」

ウエイト→重石→しず のことでした。物を見せたら。

「YEEEEEES!This is ホワイト!」

白じゃねーよ!

この後、無事に公演は初日を迎え、その後さらにすごい歓迎パーティーを行うことになりますが、それはまたの機会に…(Twitterでは書いていますが)